吉田知那美のコラム Vol.21

Yoshida Chinami Column

ハラスメントの話

気がついたら34歳でした。

カーリング選手は「カーリング歴」なるものがテレビ放送などで、選手紹介として載ることがあるのですが、そうなってしまうと7歳からカーリングを始めた私のカーリング歴は27年。だいぶ大ベテランの域に入ってしまっていることを感じざるを得ない今日この頃です。

ただ、「カーリング選手」として競技を生活の基盤としだしたのは19歳で北海道銀行フォルティウスに入団してからなので、実質のカーリング歴は15年。

15年…。そうカウントしても、ベテランと呼ばれることは否めなくなってまいりました。


気がついたら、ゆり、ゆうみ、さっちゃんとカーリングをして10年経っていました。

同じメンバーで続けることが偉いとか、良いチームだという証明とかではもちろんないのですが、シンプルに、そんなチームは世界をみても無いのです。ただ、稀有なチームなのです。
10年経ってもくだらないことで笑って、お休みの日に一緒に遊びに行って、カーリングに夢中になって、真剣に話し合って、勝って泣いて負けて泣いて。鏡を見れば確かに顔にはシミとシワが増え、この文章を打っている指の関節なんかも知らぬ間に太く逞しくなっています。
でもこのメンバーでカーリングをしていると、「本当に10年経った…?」と相対性理論を感じざるを得ない状況に陥ってしまいます。


気がついたら後輩ができていました。

ロコ・ドラーゴは、彼らがまだ私の身長より小さかった頃から知ってる地元の後輩です。私が朝ネッツトヨタ北見に出勤する時、住んでいる地域が近いドラーゴのメンバーが白いワイシャツに黒の学生服を着て、自転車通学している姿を見ていました。
今でこそ同じチームで支え合う頼もしい同志ですが、今も近所のお姉ちゃんの気持ちでもあるのでドラーゴが海外遠征中などは、あの子たち困ってないかな、怪我してないかな、ちゃんと栄養あるご飯食べてるかな、などソラーレみんな過保護になりかけています。


気がついたら後輩とどう接したらいいかわからなくなっていました。

周りを見渡すと、カーリング界は私たちよりも10歳以上も年下の選手たちがたくさん。
長い時間、同じメンバーでプレーしている私たちは、そんな後輩たちとどう接したら良いのか迷うようになっていました。
ロコ・ステラのメンバーとも一緒にご飯に行きたいよねとチーム内で話していても「でも、私たちが誘ったら嫌だったとしても断れないんじゃないかな?」とか、「みんな仕事とカーリングを両立していて忙しいのに、せっかくの休日を奪ってしまわないかな?」などと話しては、誘いたいけど誘えない状態が続いていました。
これが、長年、同世代の同じメンバーでプレーし続けた結果発生した『なんか、全部何かのハラスメントになりそうで後輩たちと接せられない。』問題です。

そんな状況を打破するきっかけになったのが、ロコ・ステラの松澤弥子選手(やこちゃん)です。
私たちは2025年2月に横浜で開催された日本選手権のリザーブ選手をやこちゃんにお願いしました。
はじめは緊張気味だったやこちゃんもすぐにロコ・ソラーレの一員になってくれました。
練習もオフも一緒に過ごす中で私たちも「なんかのハラスメントになっちゃうのでは」という後輩と接するぎこちなさが少しずつなくなってきました。そして私たちはついに、満を持して、やこちゃんにこんなお誘いをしました。

「やこちゃんも一緒にロコ婦人部でガーデニングしない?」

そう、ロコはじめての後輩へのお誘いはまさかの婦人会だったのでした。
一瞬よぎる「これは花ハラスメント?」の不安を吹き飛ばす勢いで「やりたいです!」と言ってくれたやこちゃん。そしてステラのほのかも加わってくれ、ロコは見事、後輩2人と一緒にガーデニングをすることになったのでした。
一緒に土壌を作り、苗を植え、水やり当番を決めて、ハーブや花の成長をみんなで共有し合う。ガーデニングをきっかけに私たちは一気にお近づきになり、たくさん話をするようになりました。
ガーデンの枠を越えて一緒にお祭りに行ったり、さくらんぼ狩りに行ったり、すごく楽しい時間を過ごすことができました。

「花を育てる」ことをきっかけに人間関係を育むことも一歩成長できた今年の夏。急がず焦らずゆっくりと、年齢や競技歴に関係なく、カーリングを通して出会う人たちとの縁を大切にしたいと思っています。

ちなみに最近ドラーゴと一緒にボウリングをするのですが、次回開催の誘いは「みんなで旭川まで行って20ゲーム」これは流石にボウリングハラスメントでしょうか。
(北見市から旭川市までは約165km!)

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