吉田知那美のコラム Vol.11

Yoshida Chinami Column VOL.11

写真の話

第一章 写真を使ってもらった話
第二章 写真を撮ってもらった話
第三章 写真を贈った話

第一章 写真を使ってもらった話

夫の仕事はアルペンスキーのコーチで、拠点はオーストリアにおいています。
仕事上、選手の撮影のためや記録用として持ち歩いているカメラはSONY、レンズはタムロンの18-300を使用しています。
2023年12月の年末のホリデー期間、私は夫がいるヨーロッパで過ごしました。先にカナダでのグランドスラムで2023年最終戦を終えた私は、夫がコーチをする日本アルペンスキー男子チームの2023年最終戦となるWカップで合流することとなりました。開催地はイタリア マドンナ・ディ・カンピリオ。村民はわずか700人弱ながら世界中から多くの観光客が訪れるスキーリゾート地であり、アルペンやウィンタースポーツの国際競技会の開催地として有名な地でもあります。
日本ではJ SPORTSでアルペンスキーのワールドカップが観戦できます。私も自分の試合や練習がない時にアルペンのレースがあった時にはいつもJ SPORTSで観戦しています。いつか現地でレースを観戦したい!と思ってはいましたが、競技シーズンがまったく一緒のスキーとカーリング。「私が選手としての第一線を退くまでは、アルペンの現地観戦は無理かな。」と、ずっと諦めていました。しかしチャンスはいつも突然にやってきます。
2023年はロコ・ソラーレの年末休暇期間と、アルペンのワールドカップの年内ラストレースとがちょうどバッティングしたのでした。そもそも私たち夫婦は会うことも至難の業。「お互いの時間が合うのであれば世界中のどこかで会えればいい」という心持ちで生きている私にとっては、①私の休暇②夫の休暇③夢だったワールドカップ このすべてが同時に発生するなんて、私にとっては神様が味方してくれてとしか思えないほど稀有な出来事でした。
夢だったワールドカップの現地観戦。夫はレースで忙しいので基本的は私は単独行動でマドンナの地を、そしてレースを満喫させていただきました。
レース前日のビブドローから、夫から預かったカメラで目に映るすべての「初めて」を記録し続けました。せっかくなのでここで私が撮った写真を紹介させてください。

マドンナのビブドロー会場
レースを見つめる観衆
コース整備をする人たち
マニエル フェラー選手

実は最後の写真は、SKI Classic2024年第2号にて夫が寄稿している最前線レポートの扉写真として使っていただきました。

言わずもがなですが、私は写真を撮ることに関してはど素人です。そんなど素人でも、目に映る感動のその瞬間をそのまま写真に残すことができたのは私の腕前ではなくタムロンのレンズの力。タムロンさん、いつもありがとうございます。
ちなみにですが、このマドンナに到着直前、私のスーツケースはロストバゲージ。防寒具も防寒着もゼロ。真冬のマドンナ・ディ・カンピリオに無防寒は体感裸です。結局スーツケースは届かなかったため衣類は夫のものを借りて過ごしました。神様が与えてくれたワールドカップ観戦チャンス。きっと、防寒具ゼロくらいのちょっぴり不運に見舞われないと帳尻が合わないくらい、幸せなひと時でした。

第二章 写真を撮ってもらった話

今年の7月で結婚してまる2年が経ちます。私たちは結婚式も結婚披露宴もパーティーも、何も行いませんでした。理由はただ一つで両家族(どちらも自営)、北海道北見市、長野県野沢温泉村、ロコの拠点カナダ カルガリー、夫が住んでいたオーストリアのサンクト・アントン・アム・アールベルグ村でお世話になっているみなさん、友人、そして私と夫のスケジュール、それらが合う確率は天文学的数字であることでした。
結婚してしばらくした頃、母と実家のリビングでコーヒーを飲んでる時、「結婚写真くらいはみたいな」のその一言で、結婚写真を撮ってもらうことを決めました。
そうと決まればあっという間でした。どんな写真が撮りたいか、どんなドレスを着たいか、どこで撮りたいか、など結婚写真を撮ってもらううえで決め手となるマスト条件はたくさんありますが、私の場合は「誰に撮ってもらいたいか」で結婚写真のすべてを決めました。
私が撮ってもらいたかったフォトグラファーさんは下園啓祐さん。
兵庫県出身、ウエディングフォトや広告撮影など多岐に渡り活動しており、昨年発売された写真集「チューイング ロックンロール」は第七回写真出版社大賞を受賞しています。
そんな下園さんに結婚写真を撮影していただいたのは昨年初夏。大阪梅田のスタジオで撮影しました。小道具の持ち込みも自由で、撮影演出などのリクエストもできました。でも私たちは「満30歳のそのままのふたり」を残してもらおうと何も持ち込まず身ひとつ、極力そのままの状態で撮影してもらうことにしました。
30歳までにたくさん笑って刻んだ目尻のシワも、腕時計の形の日焼けも、ロードバイクとランニングで日焼けした手も、極力隠さず消さず自然に全部そのまま。撮影中も大阪で食べたいもの、撮影後に観にいくなんばグランド花月の話、好きなお笑い芸人さんの話をしながら、その時に身をまかせポージング。まるで友人たちとお茶をしている時のような、あたたかく自然で等身大の空間で結婚写真を撮っていただきました。
せっかくなのでここで下園さんが撮ってくれた写真を紹介させてください。

ちなみにですが、私はこの撮影の集合時間に汗だくになりながら数分遅れてしました。

理由は「道を渡れなかったから」です。その後知ったのですが、大阪梅田は横断歩道が極めて少ないで有名な都市だそうで、スタジオはすぐそこに見えているのに横断歩道というものが見つけられず「渡りたい!でも渡れない!」のジレンマと戦ってから撮影に挑んだのでした。でも、それぐらいのちょっぴりトラブルに見舞われないと帳尻が合わないくらい、幸せで特別なひと時でした。

第三章 写真を贈った話

5月18日、リリースが出た通り、ロコ・ソラーレのリード、そして妹の夕梨花がスピードスケート選手の新濱立也さんと結婚を発表しました。昨年、ゆりから「来年春、結婚することにした」と聞いた時からずっと、私の頭の中にいる「小さな頃のゆり」が走馬灯のように駆け巡り、じわじわと幸せの涙を流し続けています。
吉田家には先祖代々の様々な写真が残っています。婚礼写真、戦時中の写真、家族写真、学校行事、成人式の写真など、今も大切に保管されています。
大好きだった祖父母の婚礼写真は私のお気に入りの写真です。吉田家の三姉妹が成人式に着た紋付きの振袖はこの婚礼写真で祖母が着ているものです。婚礼写真に映る20代の若い祖父母は少し緊張しながらも凛としていてとても美しい表情をしています。祖母の表情からは決意のような力強さも感じます。こうしてご先祖の残してくれた写真を見るたびに命を繋げてきてもらったことを実感し、お仏壇に手を合わせます。

そんな経緯もあり、今回、私と夫とで「新・新濱夫婦」に結婚祝いとして、結婚写真を贈ることにしました。ここまで読んで察しのよい方はお分かりかと思いますが、今回、新濱夫婦の結婚写真を撮影してくださったのは下園啓祐さん(第二章ぶり2度目の登場)
せっかくの機会だから!と、ゆりが声をかけてくれて、3姉妹そして3夫婦全員での写真も撮っていただきました。

せっかくついでに、ここで下園さんが撮ってくれた写真を紹介させてください。(新濱夫婦に許可をいただきました)

何度も何度も見返したくなる写真です。
ゆり、濱ちゃん。それぞれの夢や目標への挑戦も、これからふたりで一緒に叶えていく夢や目標も、これからもずっとかげながら応援しています。結婚、本当におめでとう。
この写真から始まった2 人で一つの夫婦としての笑顔。たくさんの笑顔の写真が増えていきますように。

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