吉田知那美のコラム Vol.22

Yoshida Chinami Column

価値観の違いの話

今回のコラムは、今年の10月頃、カナダのオンタリオ州で行われていたカーリングツアー の試合終わり、お家へ帰る車内で私たちがしていた話の記録です。



その日の私の座席は助手席。紅葉した木々が美しくて見惚れるように流れる景色をぼーと見つめていました。信号待ちで止まった交差点で何気なく立ち並ぶ住宅に視線を移すと、小さな一軒家の玄関テラスに、椅子を並べて座っている老夫婦の姿が目にとまりました。


おばあちゃんは白のカーディガンに、遠くからでも目を引く真っ赤なスカート。おじいちゃんは白いワイシャツ、チェックのブラウンのスラックスにサスペンダー、そしてキャメルのハットを頭に乗せていました。それぞれの椅子には杖が立てかけてあり、手にはアイスクリームを持っていました。


私はみんなに「見て。あのおじいちゃんとおばあちゃん、すごくお洒落で可愛い。」とつい声をかけます。みんなが信号待ちの車内から一斉に外を見ます。

「本当だ。お洒落してアイス食べてる。」

すると夕湖(ゆうみ)が、「なんかいいな。ああいう歳の取り方。」と話し出します。
「二人とも足が悪くて外出ができないのかもしれないけど、お洒落してお家のテラスで一緒にアイス食べてデートしてるのなんかいいよね。」
そしてこう続けます。
「なんか私も本当はもっとかわいい色の服とか着たいんだよね。他の人が着てるのは素敵だなって思うのに、自分が着る勇気が出ないんだよね。」

 

夕湖の言葉にみんな大きく頷きます。

 

「かわいい色の服着てみようかな。」
「遠征中でももう少しお洒落してみようかな。」
「もっと、自分たちを許してもいいのかもね。」


この日私たちは試合帰りの車内で、「勇気を出して着てみたい服を着てみる」という小さくて大きな目標を立てたのでした。
ただ、どんな目標も、どんな覚悟も、すぐに達成できるなんてことはなく、少しずつの変化の積み重ねでしか大きな変化への達成ができないことをカーリングを通して理解しています。
・赤い靴下を履いてみる
・パジャマの色をピンクにしてみる
・トレーニングウエアでパステルカラーに挑戦してみる。
私はその日の就寝前、携帯のメモに小さな勇気を書き記したのでした。

それから数日後。
私たちはアルバータ州エドモントンへの移動のためトロント空港にいました。
それでは、その日の夕湖ちゃんの私服をご覧ください。

※写真(成人式の小野寺亮二監督の写真をプリントしたTシャツ)

夕湖ちゃん、そのTシャツを私服にする勇気があるなら、ピンクの服を着る勇気くらいいつでも出そうなものですが。
最近感じた、価値観の違いの話でした。

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